バックオフィスのDXを推進するメリットとは?注目される背景と課題

2023.09.21

バックオフィス部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について「ITツールを導入することによる業務効率化」をイメージする人は、多いのではないでしょうか。実際、経理、総務、人事、営業事務などバックオフィスの業務を効率化するシステムは非常に多く開発・提供されています。

また、ただ業務効率化するだけはなく既存システムやレガシーシステムの刷新、新規のツールの導入など、自社の環境に適切な施策を行うことで、間接部門だけでなく事業収益を生み出す「コア業務」の強化も図れるのがバックオフィスのDXの大きな目的といえるでしょう。本記事では、バックオフィス部門のDXの基礎知識や具体的な施策例について解説します。

バックオフィスにおけるDXとは?

バックオフィスのDXは「単なる業務効率化」ではなく、会社組織そのものや他部署を巻き込んだ業務改革などが求められます。そのためにはDXの本来の目的も理解することが大切です。

バックオフィスにおけるDXの概要

バックオフィス業務は総務、法務、経理、財務、人事、営業事務、情報システムなど顧客と直接やり取りをしない仕事の総称です。営業職のような直接収益を生み出す「フロントオフィス」の対義語であり、業務を通じて組織を円滑に回すことが主な役割です。バックオフィスのDXと「業務効率化」は深い関係がありますが、まずはDXの定義について確認しましょう。

■DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

※引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0 」

バックオフィス業務にデジタル技術を取り入れることで、経理部門などの各部署だけでなく、全社的な事業の変革を促してイノベーションを起こすことが目的と考えられています。例えば、デジタル技術を取り入れて各部門のデータを集計、蓄積、分析して業務改善を図るほか、業務効率化による省力化、省コスト化を実現できれば、捻出した資金や人的リソースをコア業務の強化や新規事業の立ち上げなどにも役立てられます。このような取り組みの結果、新しい価値の創出につながり自社の競争力向上にもつながるのです。

バックオフィスのDXが注目されている理由

バックオフィスのDXが注目されている理由については、間接業務という特性上、ITツールによる「自動化」や「効率化」が比較的図りやすいことが挙げられます。一方、働き方改革の推進によって在宅ワークの導入に取り組む企業が増えたことも注目されている理由の1つです。

例えば紙の書類や捺印が必要な決裁フローになっているほか、セキュリティの観点からテレワークに移行できないケースもあります。このように営業職などと比べると、テレワークが難しい傾向があることが浮き彫りになり、対応の必要性の高さが認知され、BCP(事業継続計画)の観点からもバックオフィス業務からDX推進に取り組む企業が少なくない理由といえるでしょう。

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バックオフィスのDXを推進するメリット

バックオフィスのDXを推進することで得られるメリットは、人員配置の最適化から生産性、品質向上まで幅広い領域で期待できます。それぞれの詳細を確認してみましょう。

コスト削減につながる

バックオフィス業務は、表計算や経理処理などの「定型業務」が営業職やクリエイティブ職と比べると多いのが特徴です。定型業務のデジタル化によって、ツールやシステムによる作業をマンパワーで行っている既存の業務の一部や全部を代替できれば、大幅なコストダウンが期待できます。特に直接は収益を生み出さない間接業務の工数を削減できれば、システムの導入・運用コストを考慮したとしても、採用コスト、研修費といった人件費などを合理的に削れる組織体制を構築できるのは大きなメリットと考えられます。

業務効率化や生産性向上が期待できる

デジタル技術を活用し、作業工数を削減できることでバックオフィスのコア業務にリソースを割くことができます。その結果、主力となる商品やサービスの生産性、品質向上が期待できます。

多様な働き方を実現できる

バックオフィス業務のDXを図ることで、リモートワークなどの働き方改革に対応できるのも大きなメリットといえるでしょう。近年では法令に押印や捺印、署名などをクラウド上で決裁できるシステムはもちろん、「電子帳簿保存法」といった法令にも対応したツールも提供されています。

レガシーシステムを上記のツールに更新すると同時に、社内の決裁フローやバックオフィス業務のワークフローを最適化できれば、多様な働き方の実現につながるでしょう。その結果、在宅ワーカーやスキルの高い主婦(主夫)といった多様な人材を確保できる環境の整備も期待できます。

業務精度を向上させやすい

経費計算といった細かな作業内容の業務を自動化できれば、人的なケアレスミスの防止につながります。経理部門では帳簿上の数字が異なると確認作業で業務進行が停滞する可能性があるうえ、営業事務の伝票の記入漏れ、ミスは取引先との信頼関係にも影響を与えるリスクがあります。DXを進行するうえで、必要な間接業務の精度を向上し、正確性と効率化を同時に実現できるのは大きなメリットといえます。

属人化の解消につながる

表計算ソフトの使い方や資料の管理方法など、バックオフィス業務は担当者ごとに「属人化」しやすいです。SaaSなどのクラウドシステムならばある程度、使用方法やフォーマットがあらかじめ定型化されているうえ、自社でもマニュアルを作成すれば業務のやり方が「ブラックボックス」になるリスクは低減すると考えられます。その結果、属人化の解消が期待できます。

リソースの有効活用

バックオフィス業務を効率化することで各部門のコア業務に集中することができます。例えば、人事部門の場合は「採用計画の策定」や「採用・社員面談」、経理部門の場合は「業績管理」や「予算管理」、「決算業務」などの業務です。ノンコア業務の工数を削減し、収益につながる「コア業務」に集中することができれば組織体制の強化につながることでしょう。

バックオフィスのDX推進における課題

バックオフィス業務のDXの推進に取り組む企業は多いものの、業務効率化やその先にあるイノベーションを起こせていない例もあります。バックオフィスのDXの代表的な課題を2つ紹介します。

IT人材が不足している

バックオフィスに限らず、DX推進のプロジェクトを成功させるには、計画段階からIT・デジタル技術と自社の課題、環境に詳しい人材が不可欠です。特にバックオフィスがアナログ作業やレガシーシステムが中心の企業の場合、社内にITリテラシーが高く、ノウハウを有する人材が少ないケースがほとんどです。その結果、経営層がDX推進を掲げたとしても担当者レベルでは「何から手をつけていいのかわからない」といった問題が生じる可能性が高くなります。そのため、DX推進のために「新たな人材を採用する」もしくは「外部の専門家に依頼する」といった対策が求められます。

移行には費用と手間がかかる

バックオフィスのDXによって大きな成果を得るためには、自社が抱える課題や伸びしろに対して適切な「デジタル技術の導入」と「ITツールをフル活用できる体制・環境の構築」が不可欠です。たとえクラウド上で決裁できるシステムを導入したとしても、社内ルールで「電子印鑑は不可」と定められていたとしたら、効率化を実現するのは困難といえるでしょう。

さらに複数のシステムを更新、導入するにはコストがかかりますし、運用体制を構築するには現場の従業員の教育も考慮しなければなりません。このようにアナログからデジタルへの移行には費用と手間(時間)を要することも計画時に組み込み、関係者が共有しておくことが必要です。

バックオフィスのDXを推進する具体的な方法

バックオフィスのDXを推進する方法や導入するツールは、部署や業務の種類によって異なります。その代表的な6つの手法を紹介します。

ペーパーレス化を進める

多くの間接業務に共通するDXを推進する施策の1つが「ペーパーレス化の推進」です。ペーパーレス化とは、紙の書類や資料を電子データとして保存することです。書類の管理コスト、保管場所を削減できるほか、部署を跨いで資料を共有しやすくなるため「ナレッジベース」の構築にもつなげられます。バックオフィスにおけるDX推進において、取り組みやすい施策の1つです。

また、「改正電子帳簿保存法」によって2024年1月からは、幅広い事業者は電子取引においてやりとりする請求書、領収書は電子データとして保存しなければならない義務を負います。そのため、DX以外の観点からも検討する必要性の高い施策といえるでしょう。

※参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました

業務の可視化を行う

バックオフィスのDXを検討する際、「既存業務の可視化」は欠かせません。業務フローはもちろん、営業、受注から納品、請求、アフターフォローや顧客管理までの一連のビジネスプロセスを棚卸し、可視化します。各工程のバックオフィスの業務と担当者のほか、営業やマーケターと連携する作業、資料などをピックアップすることで、「部署を横断した効率化」や「組織や全社単位での業務平準化」などを図れる施策を検討できます。

アウトソーシングを検討する

バックオフィス業務の最適化を図る方法は、社内でデジタル技術を活用するだけではありません。クラウドツールやビジネスチャットを導入すれば、社外リソースでも円滑にバックオフィス業務を行える環境を構築できます。デジタル技術だけでは完結しない業務であっても、アウトソーシングを活用すればより効率的で人的コストも削減できるワークフローをつくれる可能性があります

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RPA(業務自動化ツール)を導入する

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、パソコンで行っている作業を自動で行うためのソフトウェアのロボットです。あらかじめ、指示した手順に則って作業できるため、特に定型業務が多いバックオフィスのDXを推進する際に注目されるシステムです。RPAで作業の全部、もしくは大部分を自動化できる代表的な業務は以下のとおりです。

  • 請求書の作成
  • 勤怠集計と自動メール配信による通知
  • 入金確認
  • 受注情報や在庫確認
  • メールによる経費精算情報の集約
  • リストの転記

例えば、データ集計を夜中にRPAが行うように設定すれば、翌日の出社後すぐに担当者がデータの分析を行えるようになるなど、効率的にバックオフィス業務を遂行しやすくなるでしょう。近年では直感的に作業手順を設定できるRPAも提供されているため、導入のハードルも低くなりつつあります。

クラウドサービスを利用する

従来、システムを導入するには自社専用にカスタマイズする「オンプレミス型」が主流でした。しかし、オンプレミス型のシステムは時流に合わせた更新が難しく、他のベンダーとの連携が難しいため「レガシーシステム」になりやすく「2025年の崖」の要因の1つとも考えられています。

対してクラウドサービス(SaaS)のシステムは、更新やアップデートは業者が行ってくれるうえ、連携もしやすく、導入コストも低く手間も少ないというメリットがあります。会社の規模、取り扱う商品によっては導入が難しいケースも考えられますが、積極的に検討する価値は高いといえるでしょう。

チャットボットなどAIツールを導入する

バックオフィス業務のなかでも、「顧客対応」や「社内FAQ」など書面上で完結しない業務については、テキスト・音声で自動会話する「チャットボット」や機械学習する「AIツール」の導入が有効です。例えば、ディー・キュービックの「AIクラーク」で提供するサービスでは、代表電話の自動対応、担当者の取り次ぎといった「電話対応の自動化」だけでなく、問い合わせ内容をAIがグルーピングし、人が効果の高い「FAQ作成」を図ることができます。さらに自社の課題に対する自動化の伴走サポートも受けられるため、初めてバックオフィスのDXに取り組む企業にとっても活用しやすいのがメリットです。

参考:AIクラーク

計画的にバックオフィスのDXに取り組もう

バックオフィス業務の内容はさまざまで、さらに各業務の連携や部署の横断も考慮したシステムを導入し、運用しなければならないケースも珍しくありません。そのため、単なる業務効率化の観点ではなく、より俯瞰した立場でDXを推進する人材の必要性は高いと考えられます。ディー・キュービックでは、RPAやAI-OCRといったデジタル技術を始めとした、有人対応も含めたハイブリット運用でバックオフィス業務の改善・効率化を支援しています。自社に適したDX推進がわからない際はぜひお気軽にご相談ください。

参考:バックオフィスBPOサービス

参考:代表電話受付パッケージ

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著者情報

ディー・キュービック株式会社 マーケティング部

ディー・キュービック株式会社は、1979年に設立されたコンタクトセンター運営・DX化の専門企業です。多様化するコミュニケーション環境の中で、アナログとデジタルでの「対話」から豊かな「顧客体験」を共創する企業として、クライアントの付加価値創造を支援しています。

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