ナレッジマネジメントとは?導入する目的やメリット、手法、注意点

2023.07.10

社内の人間が持つ知見は企業の財産であり、上手に活用することで新しい人材や設備を導入することなくイノベーションの原動力となり、自社の問題点や過去から長期間にわたって抱えている課題の解決に大いに役立ちます。

社内で保持しているKnowledge(知識)を集約し、社内の従業員全体における共有を実現させる経営手法を「ナレッジマネジメント」といいます。ナレッジマネジメントを適切に導入すれば、人材不足の解消や業務効率の大幅な向上が期待できます。今回はナレッジマネジメントの基礎知識と導入手順について解説します。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントのナレッジとは「Knowledge(知識)」を指し、社内に蓄積されている属人的な知識を社内全体でナレッジ共有するという意味合いを持ちます。

ナレッジマネジメントの意味

ナレッジマネジメントとは、組織全体の技術力や生産性の向上を目指すためのマネジメントの手法のことです。

具体的には、ベテラン社員が持っているスキルや知識を組織内で共有することで個人の知識や経験を自社のナレッジとして組織的に蓄積させることをいいます。そのため「知識管理」や「知識経営」とも呼ばれます。

ナレッジマネジメントの目的

ナレッジマネジメントの目的は、属人化の原因となる暗黙知を形式知化することです

暗黙知とは、言語化されていない感覚的な知識やスキルのことで、個人に依存する勘やコツ、ノウハウなどを指します。一方で形式知とは、図表など整理された知識やスキルのことで、マニュアルなど誰でも理解できる形にまとめたものを指します。

つまりナレッジマネジメントは、特定の従業員の頭の中にある技術やノウハウを公表し、誰でも理解し実施できるようマニュアル化することが目的です。

ナレッジマネジメントを行うメリット

組織全体の能力向上につながる

新しいナレッジの獲得により、組織全体の能力水準の向上が期待できます。また属人化を防ぐことで、事業の引き継ぎや継続も円滑になるでしょう。

業務の効率化に役立つ

マニュアル化することで、これまで特定の個人に依存していた業務がほぼすべての従業員でも対応できるようになるため、生産性の向上に役立つでしょう。また業務における不明点も従業員自身で解決できるようになるため、業務の効率化も期待できます。

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コスト削減が期待できる

ナレッジマネジメントを導入することで既存の従業員でも業務の対応が行えるため、特定の業務運用をスムーズにするためだけに新しく人員を導入する必要がなくなります。また従来は特定の従業員が新人教育に当たるケースが一般的ですが、業務に対応できる人員が増えることで教育負担が分散され、教育にかける時間の短縮および人材育成へのコストカットが可能です。

ナレッジマネジメントの基本の枠組みと4つの手法

ナレッジマネジメントが適切に導入されれば、これまで特定の担当者が携わっていた業務を他の従業員でも対応できるようになります。実現させるためには、推奨されているフレームワークや手法を試して知識や価値の共有化を図ります。

ナレッジマネジメントの枠組み「SECIモデル」とは?

SECI(セキ)モデルとは、ナレッジマネジメントの目的である、暗黙知を形式知に変換するための基本のフレームワークです。

ナレッジマネジメントは、暗黙知を形式知に置き換えるという行為の連続です。そこで重要となる以下の項目の頭文字を取ってSECIモデルと呼びます。

SECIモデルイメージ

Socialization
(共同化)
特定の従業員から他の従業員へノウハウや知識いわゆる暗黙知を伝えて実践し、暗黙知の理解を深めてもらう。
Externalization
(表出化)
暗黙知を文字などに起こしてマニュアル化し形式知に変える。
Combination
(連結化)
形式知に変えた物同士を組み合わせることで、大きな知識体系を構築する。この段階で、特定の従業員が保持していた暗黙知が社内の財産として業務に本格的に取り入れられるようになる。
Internalization
(内面化)
知識体系を他の従業員へ伝えることで、従業員のなかでもさらに暗黙知が出来上がり、共同化が行えるようになる。

ナレッジマネジメントの4つの手法

ここでは代表的な4つの手法を紹介します。これらはいずれも手法の優劣がある訳ではなく、導入時の目的や求める効果によって使い分けたり、組み合わせて利用することが重要です。

ベストプラクティス共有型

ベテラン社員や優秀な社員が持っている知識やノウハウなどを組織に共有する手法で、組織全体の能力水準の向上に役に立ちます。例えば、共有したいナレッジをマニュアル化したり、情報の連携機能がついたツールに蓄積したりして他の社員がいつでも閲覧できる状態を作ることが当てはまります。

経営資本・戦略策定型

自社や組織内に蓄積された知識を分析し、経営戦略に役立てる手法です。また自社の内部だけでなく競合他社の分析も同時に行うため、今後の経営戦略における目標や他社との比較ができます。業務内容の再検討および場合によっては暗黙知を持つ従業員を中心に、組織を再構築する必要もあるでしょう。

専門知識型

企業内外における知識を洗い出し、データベース化する手法です。たとえば、過去に顧客から寄せられたお問い合わせ内容をもとにFAQ化またはクラウド化することで、従業員が知りたい情報へすぐにアクセスできます。

さらに組織内だけではなく、コールセンターやお問い合わせの部署など顧客と接する機会がある場合は、FAQを公開することで顧客が自身で検索して問題解決が図れるうえ、オペレーターの負担軽減につながります

顧客知識共有型

これまでの手法は業務改善や従業員のスキルアップが主な目的ですが、顧客知識共有型にいたっては、顧客を優先に考えます。

これまでに寄せられたクレームや質問内容を洗い出して整理します。整理した内容は、今度同様のお問い合わせが来た際にスムーズな説明や対応ができ、同じ質問が続くようなら課題点として解決に取り組むきっかけにもなります。

さらに、課題点をエスカレーションして相談しやすい環境が整えられることがより望ましいでしょう。

ナレッジマネジメントを導入・運用する手順

ナレッジマネジメントの導入方法は、はじめに導入する目的の設定から行います。目的を明確にしなければ、中身が伴わずに社内の課題解決につながらない恐れがあります。

Step1.ナレッジマネジメント導入の目的を明確化する

自社になぜナレッジマネジメントを導入するのかという目的を洗い出します。目的の内容によっては共有するべき情報が変わってくるためです。

例えば属人化の解消を目指すなら、暗黙知を持つ特定の従業員のノウハウを知る必要がありますし、組織の能力向上を目指すなら暗黙知に加えて企業全体の業務プロセスや課題点を知る必要があるでしょう。

Step2.どのような情報を共有すべきかを決める

目的を達成するための知識やノウハウを洗い出します。洗い出す情報を特定するポイントは、従業員が抱えている悩みや課題を見つけることです。

ヒアリングやアンケートの実施で解答を募る方法も効果的ですが、ITを駆使して収集ツールなどを使用したほうが効率よく集まるでしょう。また同じ内容で悩みを抱えている従業員が多いほど、優先的に収集する必要のある情報かつ解決すべき課題といえます。

Step3.実際の業務でナレッジを活用する

収集した情報を実際の業務に組み込みます。重要なことは、情報の共有というプロセスもあわせて組み込むことです。情報の共有が体系化できれば、従業員へ業務の負担を増やしたり情報収集に人的コストを費やしたりする必要がありません。

Step4.定期的にナレッジやプロセスを見直す

現場で実際に使用して使いやすさを確認してもらい、修正や改善を繰り返します。ナレッジマネジメントは、仕組みを構築して実践するだけでは十分な効果が期待できないでしょう。

体系化して、修正や改善のサイクルを繰り返す必要があります。主な改善ポイントとしては、例えば1回のナレッジマネジメントの工程においてどれくらいの効果が得られたか確認し、目標値に達していなかった場合の原因を突き止め、改善策を洗い出します。

洗い出した改善策を実施するために、再びナレッジマネジメントを実施します。このように修正と実施を繰り返すことで、ナレッジマネジメントの導入に成功しているといえるでしょう。

ナレッジマネジメントを導入するときの注意点

ナレッジマネジメントは、既存の部署や従業員から知識を収集するところから始めます。
そのため短期間では成果が得られない場合もあるでしょう。また成果が出た場合、従業員がマニュアル依存化しないよう注目することも大切です。

ナレッジを共有しやすい体制を整える

営業など組織内で成績を競っている場合、ノウハウやナレッジの共有を拒む場合があります。その場合は、インセンティブや表彰の制度を設けるなど、ナレッジを共有したくなるような体制を整えることが大切です。

場合によっては組織内の競争力を緩和させ、同じ目的や目標を持っているという点に意識を向けさせる必要があるでしょう。

社員がマニュアルに依存しすぎないようにする

マニュアルの内容を充実させることで、従業員がマニュアルに依存する可能性があります。すると、目の前の課題に対して自力で解決する力が失われるため、思考する重要性もあわせて周知する必要があるでしょう。

暗黙知を表出・共有するための「場(=インフラ)」を整備する

暗黙知の言語化や図式化は簡単ではありません。そこで、暗黙知を言語化することを目的としたインタビューやミーティングを実施することで、場(=インフラ)を整備します。

整備する方法としては、言語化や図式化するためのマニュアルを用意するのも効果的ですが、AIツールやシステムの導入を新しく検討する方法も良いでしょう。

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ナレッジマネジメントとは社内資産の棚卸しである

特定の従業員でしか対処できない案件や業務がある場合、担当者が不在時の際のリスクが非常に高いため早急に解決する必要があるでしょう。そこでナレッジマネジメントを実施することで、特定の従業員が持つ技能やノウハウを公開し、社内の知的財産として保持することをおすすめします。

その際に成果を上げて従業員の満足度向上を図ることも大切ですが、従業員同士の知識共有が積極的に行われるようサポートしてネットワークを強化する必要があります。効果的な方法としては、グループウェアやITツールを活用すると効率的に構築できるでしょう。

ツールを導入する際は、無料ダウンロードでお試しできる場合もあるため、積極的に導入することをおすすめします。ナレッジマネジメントを通し、社内の知識や課題を棚卸ししましょう。

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著者情報

ディー・キュービック株式会社 マーケティング部

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