2023.09.14 NEW
チャットボット(chatbot)はテキストもしくは音声で人に代わって応答するシステムを指します。カスタマーセンターや社内ヘルプデスクのほか、ナレッジの共有などを目的にさまざまな企業で導入されています。
チャットボットには複数の種類があり、自社の課題や目的に合わせて導入することで業務効率化や担当者の負担軽減、品質向上といったメリットを得ることができます。本記事では代表的なチャットボットの種類の特徴と得意な領域、導入する際の注意点について解説します。
目次
チャットボットは、搭載しているAIの有無によって「AI型チャットボット」と「シナリオ型(ルールベース型)チャットボット」の2種類に大別できます。それぞれの特徴は大きく異なるため、導入をする際は解決したい課題や目的に合わせて適切な種類を選ぶことが大切です。
AI(人工知能)による機械学習を行うことで、質問者の意図を分析して回答する機能を搭載したチャットボットです。「機械学習型チャットボット」ともいい、導入後は会話ログを自動解析することで回答の精度を高められるのが、後述するシナリオ型にはない代表的な機能の1つです。最近では、Chat GPTなどの自然言語処理人工知能モデルを活用することで、AI特有の不自然さを極力排した言語処理が施されたものもあります。
AI型チャットボットのメリットは、シナリオ型と比べると幅広い質問に対応できることです。具体的には言葉遣いの「ゆらぎ(表記ゆれ)」や「抽象的な表現」といった複雑な質問にも対応しやすいことが挙げられます。さらにシナリオ型と比べると質問に対する回答までの時間を短縮しやすく、人間と会話する感覚で利用できるため、ユーザビリティを向上させやすいのも大きなメリットだと言えます。
AI型チャットボットは、質問・回答に関わる情報をあらかじめ「データ学習」させる必要があります。特に特定の製品やサービスに特化したFAQや問合せ受付に利用する場合、会話ログの蓄積が少なく機械学習が不十分なケースが多い導入当初は不自然な回答や誤回答のリスクが高いので、シナリオ型と同様、事前にしっかりと備えておく必要があるでしょう。また、シナリオ型と比べると導入、運用コストが高い傾向なのもデメリットの1つです。さらに専門知識を持つ人材が必要な製品もあります。社内でAI人材の確保が困難な場合は、外部業者の支援を検討しなければならないことも考えられます。
ユーザーからの質問を想定したシナリオ(ルール)をあらかじめ用意して、それに沿った案内を行うチャットボットを「シナリオ型チャットボット」といいます。ルールベース型チャットボットとも呼ばれます。選択肢などを設けてフローチャートを作成し、適宜ユーザーに選択してもらうことで最終的に回答を提示するほか、電話での問い合わせなどに誘導する仕組みになっています。
シナリオ型チャットボットの場合、ユーザーは提示される選択肢から選ぶ動作だけで良いため、自由回答のように質問を入力する手間がかからないことが大きなメリットといえます。また、フローチャートを組んだ通りにユーザーを誘導できるので、想定外の質問などに備える必要がないのも特長です。さらにAI型チャットボットと比べると導入コストが安価な製品が多く、比較的導入しやすいのもメリットです。
シナリオ型チャットボットは、基本的にあらかじめ設定したルールの範囲外の質問に回答することはできません。AI型のように自由回答に対応できず、フリーワードも記入不能なためユーザーの潜在的ニーズというデータの取得も困難です。さらに一定数の選択を繰り返してフローチャートを辿る必要があるため、AI型と比べるとユーザーが回答に辿り着くのに時間がかかりやすいのもデメリットです。また、事前にシナリオやルールを設定するのに時間と手間がかかるほか、学習機能がないため、都度マンパワーでシナリオの最適化を図り続ける必要があります。
「会話の仕組み」の観点では、チャットボットはログ型、選択肢型、辞書型、ハイブリッド型、サポート運用型の5種類に分類できます。それぞれの特徴を確認しましょう。
ユーザーとのやりとりを通じて蓄積した会話データを基に、適切な回答を行う仕組みを「ログ型」といいます。主にAI型チャットボットで採用されることが多く、質問や回答が増えるほど回答精度が高まり、自然でストレスの少ないコミュニケーションが可能になります。問い合わせの種類が多種多様で抽象的な質問が多い現場で有効的であり、適切に導入できれば、複雑な問い合わせを含めてオペレーターが直接対応する機会を減らせることも期待できます。
主にシナリオ型のチャットボットで採用されるのが「選択肢型」です。ユーザーが質問したいことや困っているシーンなどを想定し、選択肢を設けることで回答に辿り着かせる仕組みになっています。家電の故障のFAQといった状況に応じて、対処が異なる状況においては有効性の高いタイプです。
よくある質問の数と内容がある程度、決まっている場合に採用されるのが「辞書型」のチャットボットです。「単語」と「単語に紐づく回答」をあらかじめ辞書データとして登録し、ユーザーがデータベース検索することで回答文もしくは回答ページを提示します。具体的には、ECサイトであれば「送料」と検索することで送料の規定を定めた文章などを回答するページを提示します。ほかには「解約」の場合は予め紐づけている解約方法、もしくは解約違約金などの候補を提示することもできます。一問一答の感覚で回答に辿り着けるため、わかりやすいのが特長といえるでしょう。
「ハイブリッド型」のチャットボットは、選択肢型と辞書型をケースによって使い分ける仕組みになっています。個々の顧客が抱える状況に適した対応が必要なケースは「選択肢型」、よくある質問の範囲内であれば「辞書型」をユーザーに選んでもらえるため、ユーザビリティを高められるのがメリットといえるでしょう。
チャットボットと有人サポートを併用するタイプを「サポート運用型」といいます。基本的に最初にユーザーに対応するのはチャットボットであり、解決が難しいと判断した場合はカスタマーサポートへの問い合わせに誘導するケースが多いです。チャットボットで解決できればオペレーターの負担軽減につながります。また、直接対応になった場合も、ユーザーがチャットボットとのやりとりで選んだ選択肢などの情報が共有されるため、スムーズに問い合わせ対応しやすい点がメリットです。問い合わせ内容が複雑なサービスや商材の導入に適していると考えられます。
チャットボットは業務内容によっても大きく4つに分けられます。FAQ型、処理代行型、配信型、雑談型について確認しましょう。
FAQはFrequently Asked Questionsの略語で、よくある質問に対する回答をまとめることを指します。FAQチャットボットは「FAQを会話形式で回答できる」タイプのチャットボットです。ユーザーが手軽に利用しやすく解決スピードが早いのが特長です。社内のヘルプデスク向けのFAQチャットボットを設けることで、担当者への問い合わせを減らす目的で導入されるほか、FAQシステムや窓口への誘導も可能なためコールセンターのオペレーター向けのシステムとして用いられることが多いです。
ユーザーが入力した内容を基にして、その後のシステムの処理を自動で行うためのチャットボットを「処理代行型」といいます。例えば、再配達や会議の希望日時を入力することで対象者のスケジュール調整を自動で行うシステムのほか、旅行の予約サイトなどでも活用されています。業務を自動化できるため、ヒューマンエラーの防止や効率化につながるのが大きな特長です。
あらかじめ設定したタイミングで登録ユーザーに対して、チャットで情報を発信するタイプです。他のチャットボットのように双方向のやりとりではなく、配信側からのチャットであることが大きな違いといえるでしょう。一般的にはキャンペーン情報やブランディングのための情報などを発信することが多いです。DM(ダイレクトメール)やメルマガの「チャット版」と認識されており、両者と比較するとユーザーからの親近感を得られやすいのがメリットです。
雑談を通じてユーザーのロイヤリティの向上やニーズの把握などを図るためのチャットボットです。基本的にはAI型のチャットボットが採用されるケースが多く、ユーザーはまるで人間と会話するような感覚でやりとりできるため、会話を通じて自然と企業やサービスに対する親近感などを高められるとされています。
チャットボットの種類や目的によって詳細は異なりますが、いずれのタイプでも共通するメリットと導入する際の注意点があります。それぞれを以下で解説します。
カスタマーセンターや顧客の問い合わせ対応は顧客満足度に大きな影響を与える要素の1つであり、特に待ち時間(待ち呼数)を少なくするのは代表的なKPIの1つです。チャットボットでユーザーが迅速に回答を見つけ出せれば、電話を待つ時間そのものが発生しなくなるので、ユーザーにとっても大きなメリットを得られます。また、電話に対して抵抗がある層にもアプローチできるのも、チャットボットならではの特長といえるでしょう。例えば、営業電話に対してマイナスなイメージを抱いているユーザーに対して、チャットボットで販促活動を仕掛けるなど、コミュニケーションの機会を増やして売上拡大も図れます。
チャットボットを導入することで、従業員が行っている顧客対応やカスタマーセンターのオペレーターの業務の効率化が図れます。チャットボットの対応だけでユーザーの課題が解決できれば直接対応の件数そのものが減少するほか、やりとりの一部を自動化できるだけでも、工数の削減につながります。その結果、オペレーターの負担軽減や人員削減も期待できるでしょう。創出した人的リソースなどを事業の利益を生み出す「コア業務」に振り分けることができれば、生産性の向上にもつなげられます。
チャットボットは24時間365日稼働できます。営業時間外の夜間なども、顧客の課題を解決できるため迅速に対応できる体制の構築が可能になります。顧客満足度の低下を防ぐだけでなく、自社と顧客の接点も確保できるため機会損失の防止にもつなげられるでしょう。
会話ログや検索履歴などを蓄積することで、ユーザーの声や抱えている課題などのデータを収集できるのもチャットボットのメリットの1つです。収集したデータを基に効果の高い集客方法を模索するほか、サービスの品質改善などを図れます。
チャットボットによってユーザーと自社とのやりとりのハードルを下げることができれば、ECサイト上の受注やサービスサイトの問い合わせの獲得といったCVRの向上も期待できます。また、購入を迷っているユーザーに対してもチャットで資料請求などを促せるなど、アプローチ手法が増えるのもCVRの改善を図るうえで大きなメリットといえるでしょう。
チャットボットを導入するには、初期費用や準備のための時間が必要になります。自社の環境にとって大きな費用対効果が見込めるチャットボットの種類、運用方法は各々で異なるため、複数のサービスの比較検討は欠かせません。さらに導入後もチューニングといった手間やランニングコストが発生することも、あらかじめ理解しておきましょう。
チャットボットをただ導入するだけでは、大きな効果は期待できません。「よくある質問の直接対応数の減少」といった目的をなるべく数字を明示して、組織内で共有することをおすすめします。
優れたフローチャートの設定やチャットボットの回答精度などが向上しても、すべての問い合わせに100%対応できるとは限りません。有人サポートや他のシステムとの連携も視野に入れて、顧客対応の体制を構築することが必要です。
チャットボットのメンテナンスや精度向上のためには、PDCAを回し続ける必要があります。また、AI型のような一部のサービスでは専門的な知識が求められることが多いため、チャットボットの導入時に適切な運用体制の整備が求められます。運用チームや担当者を設けるなど、専任体制を整えるのが望ましいとされています。
いずれのタイプのチャットボットであっても、定期的な効果測定、蓄積した顧客データの分析を行うことで、顧客満足度の向上や人的コストの削減効果をより高められます。チャットボットの効果測定を行う際は「回答率」や「解決率」のほか、チャットボットを経由したCV数、CVRなどを参照することが多いです。
チャットボットは、AIの有無、仕組み、業務内容によって多種多様な製品が提供されています。もしも自社の課題解決に合致しない種類のチャットボットを導入してしまうと、想定していた効果が得られないだけでなく、導入にかかった費用や時間的なコストを回収できない恐れもあります。チャットボットを導入する際は、外部の専門家の支援を受けることも視野に入れて計画的に行う必要があるでしょう 。
ディー・キュービックの「Q&A自動化ソリューション」サービスでは、工数の削減とユーザーの顧客体験向上を両立するのに最適なチャットボットの導入方法を診断し、運用設計まで一元化してお任せいただくことが可能です。チャットボットを導入してみたいがノウハウがなく、導入後の効果を推し量ることができない…といったお悩みをお持ちのご担当者様は、まずは一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
ディー・キュービック 「Q&A 自動化ソリューション」
https://www.dcubic.jp/service/aiclerk/plan-detail-qa/
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